
卒婚とは?新しい夫婦のかたちとそのメリット・デメリットを解説
近年注目されている「卒婚」とは、法律上の婚姻関係を維持しつつ、夫婦がそれぞれ自立した生活を送る新しいスタイルのことです。熟年離婚とは異なり、関係を断ち切るのではなく、互いの自由を尊重し合う選択肢として注目されています。本記事では、卒婚の意味や背景、メリット・デメリットについてくわしく解説します。
「卒婚」という新しい夫婦のかたちとは? 離婚しない選択
近年、夫婦関係の在り方に新たな選択肢が注目されています。そのひとつが「卒婚」というスタイルです。離婚とは異なり、戸籍上の婚姻関係を維持しながら、互いに自立した生活を送るというこの考え方は、多様な価値観を尊重する時代ならではのものといえます。
戸籍はそのまま、でも別々に暮らすという選択
卒婚とは、法的には婚姻関係を続けたまま、夫婦がそれぞれ独立した生活を送ることを指します。離婚手続きは行わず、あくまで戸籍上は夫婦であり続けますが、生活の実態はそれぞれの自由を尊重した別居状態に近いものです。
夫婦としての関係に終止符を打ちたいが、離婚には踏み切れない、あるいは面倒な手続きを避けたいと考える人が、卒婚という方法を選ぶことがあります。
離婚とどう違う?法律上の扱いを整理
卒婚と離婚の大きな違いは、法律上の婚姻関係が続いているかどうかにあります。離婚をすると、戸籍上も夫婦ではなくなり、民法上の義務、たとえば同居や協力、扶助、貞操の義務もすべて消滅します。
一方、卒婚では戸籍はそのままであり、これらの権利や義務は法的には依然として存在するのです。つまり、見た目には別々に暮らしていても、法律上は正式な夫婦のままです。
仮面夫婦と卒婚のちがいは?
仮面夫婦とは、表面上は夫婦仲が良さそうに見えても、実際には夫婦関係が冷え切っている状態を指します。周囲の目を気にして、あるいは子どものために別れずにいるケースも多く、外からは本音が見えにくいのが特徴です。
一方で、卒婚は互いに納得し合ったうえで生活を分け合う前向きな選択です。仮面夫婦のように世間体を気にして関係を隠すのではなく、卒婚では周囲にもオープンに伝えるケースが少なくありません。
離婚しない選択で得られる自由と安心
結婚生活に違和感を覚えつつも、すぐに離婚という結論にいたらない人が増えています。そんな中で注目されているのが「卒婚」という新しいスタイルです。法的には夫婦のままで、それぞれの人生を尊重し合うこの形には、離婚にはないさまざまなメリットがあります。
関係を終わらせずに、自分の時間を取り戻す
卒婚の大きな魅力は、婚姻関係を維持したまま、個人としての自由を手に入れられる点にあります。たとえば、別々に暮らすことで日常のストレスから解放され、自分のペースで生活ができるようになります。
離婚をせずに自由を得られるというのは、経済的・精神的な安定を求める人にとって、大きなメリットといえるでしょう。
距離を置くことで、関係が自然と和らぐことも
同じ空間で過ごす時間が減ることで、夫婦間の摩擦が少なくなるケースもあります。日々の小さな言い争いや生活習慣の違いから解放されることで、かえってお互いに対する思いやりや尊重が生まれることもあります。卒婚は、距離を置くことで関係を見直し、よりよい形に変えていく選択ともいえるでしょう。
煩雑な手続きをしなくても始められる
離婚とは異なり、卒婚は法的な手続きを必要としません。戸籍上の変更がないため、役所への届け出や書類のやり取りもなく、精神的にも手間の面でもハードルが低いのが特徴です。
そのため、話し合いさえ整えば比較的スムーズに始められるという点が、実行に踏み切るきっかけになっている人も多いようです。
共有している財産や制度の恩恵はそのまま
卒婚では法的な婚姻関係を解消しないため、夫婦の共有財産はそのまま保持できます。たとえば持ち家や貯蓄、年金などは、離婚をともなわないことで引き続き活用できるケースが多いです。
これは経済的に大きな安心感につながります。また、相続や保険の受取人指定などにも影響が出にくいため、将来への備えを崩すことなく、新しい生活スタイルへ移行できる点も、卒婚ならではのメリットといえるでしょう。
卒婚も弁護士に相談できる?トラブルを防ぐための第一歩
卒婚は、夫婦それぞれが自立した生活を送りながらも、法的な婚姻関係は維持するという新しい夫婦の在り方です。しかし、生活費の負担や今後の人間関係、恋愛に関する考え方など、卒婚にはさまざまな課題がともないます。
こうした点をあらかじめ取り決めておかないと、後々トラブルになるおそれもあります。そのため、卒婚を考えている場合は、弁護士に相談することが有効です。弁護士であれば、夫婦それぞれの事情や価値観を踏まえたうえで、生活ルールや金銭面での取り決めについて的確なアドバイスを受けることができます。
また、夫婦で話し合って決めた内容を文書化する「合意書」の作成も依頼可能です。将来的に離婚へと進む場合も、最初から弁護士が関わっていれば手続きもスムーズに進められます。卒婚は感情だけで決めるのではなく、冷静に準備することが大切です。不安を感じたら、まずは弁護士への相談を検討してみてください。
まとめ
卒婚は、これまでの夫婦関係の枠にとらわれず、お互いの人生を尊重しながら穏やかな関係を築いていく新しい選択肢です。離婚では得られない精神的・経済的な安心を保ちながら、自分らしい生き方を実現できる点に魅力があります。しかし、自由を得るには事前の話し合いやルール作りが欠かせません。とくに金銭面や将来の生活設計などは、感情だけで決めず、専門家の助言を受けることが大切です。卒婚を前向きな一歩にするためにも、弁護士に相談し、トラブルを防ぐ準備を整えておきましょう。