性の不一致が原因で離婚することはできる?慰謝料請求は可能なのか
離婚にはさまざまな理由がありますが、性に関する考え方が合わず離婚に至るケースも増えています。性に対する価値観の相違が原因で夫婦関係に不満を持っている人は少なくないと思いますが、それが理由で離婚の認定や慰謝料請求はできるのでしょうか。ここでは、性の不一致で離婚は可能なのか、慰謝料をもらえるかなどについてご紹介します。
性の不一致で離婚は可能
いずれの場合も、離婚するためには配偶者の合意を得ることが原則です。相手から同意が得られない場合、裁判での離婚を目指す必要がありますが、性に関する価値観が異なることで離婚が認められるのはどのようなケースでしょうか。
法廷離婚自由にあたる
民法上、離婚原因として認められるのは、不貞、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、回復しがたい精神疾患、その他の婚姻を継続しがたい重大な事由があげられます。性の不一致が婚姻を継続しがたい重大な事由がある、という項目に該当すると裁判官に判断される場合、離婚できる可能性が高いです。
不一致といっても内容は、その夫婦によって異なりますが、通常通り婚姻関係の継続が不可能な状態になっていると判断される、十分な事情や証拠があれば、裁判離婚は認められます。
深刻さの程度
ほかに離婚原因がない場合、性の不一致がどれほど深刻であるかが、離婚が認められるための重要なポイントになります。たとえば、加齢が原因で性的能力が減退し、性交渉がうまくいかなくなったケースや夫婦仲が悪くなったことで性交渉が行われなくなり、その期間が比較的短いなら、離婚の原因と認められにくいです。
一方で、両方もしくは片方に子どもが欲しいという強い希望があるにもかかわらず、性交不能や性交渉拒否などでしばらく性交渉がないケースや、理不尽な性交渉拒否が原因で、どちらか一方が精神的に損害を被っている場合、離婚が認められやすいです。
そもそも性の不一致とは
どのような状態を性の不一致というのでしょうか。
セックスレス
夫婦のどちらかが性行為を望んでいるにもかかわらず、相手が性交渉を拒むことを指します。
性交不能
どちらかの機能障害など、身体的な理由で性交ができない場合があります。また、結婚した当初は性行為ができていたのに、精神的・身体的な原因で性交不能に陥った場合も離婚が認められます。
性的嗜好
1日に何度も性行為を求めたり、正常な性行為の範囲に属するものでない性的嗜好があったりして、それを相手が嫌悪しているにもかかわらず、強要し続けた場合などは問題視されます。
同性愛
相手がほかの同性と恋愛関係に至り、それが原因で性交渉を拒み続けた場合も性の不一致にあたります。
性の不一致が原因で慰謝料請求はできるのか
性に対する価値観の違いが原因で、相手に強い不満を持ち、離婚を考えている場合、離婚とは別に慰謝料の請求もしたいと思う人がいるかもしれません。性に対する価値観が異なる場合、慰謝料の請求は可能でしょうか。
相手の態度
相手が行った不法行為によって、精神的な損害を受けた場合、慰謝料を請求できます。不法行為は、故意または過失によって相手に対して違法に損害を加えたことにより成立します。つまり、相手の故意または過失などで性の不一致に至ったと証明できれば、請求できる可能性はあります。
請求できる場合・できない場合
どちらかが一方的に性交渉を拒み続け、それに対する合理的な理由がないケースや、相手に強引に性交渉に持ち込まれる事態が生じた場合は慰謝料を請求しやすいです。一方、夫婦仲の悪化や、相手の病気などが理由で性交渉がないときは請求できない場合が多いです。
慰謝料が高額化するケース
婚姻期間が長い場合や、子どもが幼い場合、性の不一致だけでなく、モラハラや家庭内暴力などが認められる場合には、高額の慰謝料が認められる可能性があります。
性の不一致により慰謝料を請求する場合の注意点
慰謝料を請求するときの注意すべきポイントについて見ていきましょう。
深刻度を示す証拠
裁判所に対して、どれほど婚姻を継続しがたい重大な事由にあたるかを示す必要があります。そのためには、深刻度がわかるような証拠を提示する必要があります。たとえば、性の不一致によって受けた精神的ダメージの深刻度や年齢的な事情などです。
不貞行為を避ける
性の不一致が原因で、性的な不満が募っていたとしても離婚がきちんと成立するまでは倫理的な行動を心がけましょう。不貞行為を犯した有責配偶者と判断されると、裁判での離婚請求を認めてもらうのは非常に困難になります。
今回は、離婚や慰謝料請求について解説しました。夫婦の合意があれば、性の不一致を理由に離婚は可能ですが、相手が同意しない場合には証拠を準備して立証する必要があります。円満に離婚を成立させるためにも、一人で悩まずに弁護士など専門家に相談することをおすすめします。