配偶者の不倫相手が同性だった!慰謝料は請求できるのか?
これまで長い間、不貞行為は異性間のみとする見解が一般的とされていましたが、同性同士の場合はどうなのでしょうか。同性でも異性でも不倫にあたるのか、同性同士なら不貞として認められないのか、ここでは、配偶者が同性と不倫したときに慰謝料は請求可能か、同性不倫が原因で離婚するときに決めておくべきことなどについてご紹介します。
配偶者が同性と不倫した場合に慰謝料請求は可能なのか
今までの日本の社会常識から考えると、同性同士の関係が不貞行為とみなされることに違和感を覚える人もいるかもしれません。
不貞行為
これまで不貞行為とは、一般的に配偶者を有する者が、配偶者以外の異性と肉体関係や性行為を持つことと説明されてきました。法律上、同性との不倫が不貞行為にあたるかどうかは明記されていないため、異性間の問題よりも判断が難しい場合が多いです。
ただ、ジェンダーに関する理解が徐々に深まりつつある昨今の状況下で、2021年2月に同性間の不貞行為に関して損害賠償を認める判決がされ、新たな局面を迎えました。
慰謝料
配偶者が第三者と不貞行為に及び、それが原因で他方が精神的な損害を受けたと証明できれば、慰謝料を請求できます。不貞行為がわかった後、離婚に至らない場合でも、不貞行為をされた側が訴えを起こせば、慰謝料の請求は可能です。
同性との不倫
不貞行為によって、平穏な婚姻生活が送れなくなり、それに伴うショックを受けた場合、当事者は損害賠償責任を負わなければなりません。それは、配偶者の不貞の相手が異性・同性問わず同じです。
平穏な生活を送る権利を侵害され、精神的にダメージを受けたことに変わりはありません。当事者は相手が異性でも同性でも、他の配偶者に慰謝料を払う義務があります。
配偶者の同性不倫が原因の離婚は認められる?
同性と不倫しているとわかった場合に、離婚できるかどうか見ていきましょう。
夫婦の同意
夫婦双方が合意すれば、どのような理由であっても離婚は可能です。離婚の理由が同性との不倫であっても、夫婦間の話し合いによる協議離婚も裁判所における調停離婚も同意のみで進められます。
法定離婚事由
どちらか一方が離婚を拒否する場合、裁判を通じて離婚するしか方法はありません。裁判で認められるためには、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、回復の見込みのない精神病や婚姻を継続しがたい重大な事由がなければいけません。
不貞行為にあたるか
もともと、不貞行為とは性行為を指し、それは異性間によるものとされてきましたが、現在では、男女間に限らず、婚姻生活を害する行為もそれに当たるとされ始めています。
つまり、同性同士でも不貞行為にあたるとみなされる可能性は高いです。不貞として認められない場合も、婚姻を継続しがたい重大な事由に該当すれば、離婚は認められます。
配偶者の不倫相手が同性のときの慰謝料請求の流れ
どのように慰謝料請求を進めていくか見ていきましょう。
誰に請求するか
不貞行為の場合、配偶者だけでなく不貞の相手にも請求可能です。たとえば、被害者が受けた損害が100万円相当の場合、配偶者と不倫相手からの合計で100万円請求することができ、その内訳は話し合いで決めることになります。
示談交渉
慰謝料の請求手続きは、示談交渉から始まります。内容証明郵便などによるやり取りや対面協議で行われます。示談の目的は、不倫の責任を相手方に認めさせ、妥当な金額の解決金を支払ってもらうことです。
証拠収集
同性同士の場合、異性との場合と異なり、友人を超えた関係であることの立証や、性行為の具体的な内容の立証が難しく、より具体的な証拠を求められる可能性が高いです。
同性不倫が原因で離婚する場合に決めておきたいこと
同性不倫が原因で離婚が成立するときに、決めておくべきことを見ていきましょう。
慰謝料以外の条件
慰謝料のほかに決めておくべき条件は、子どもがいる場合の親権をどちらが持つか、同居していない方の親が子どもに会う方法や頻度、養育費、婚姻中に獲得した財産の分与、将来の年金受給における厚生年金部分の分割についてなど定めておきましょう。
支払い遅延時の対応
金銭に関する財産的請求を起こした際に、離婚が成立した後に相手が拒否することがあります。それに備えて、離婚協議書は必ず公正証書にしておき、そのなかに強制執行認諾文言を入れておきましょう。そうして作成した証書は、裁判を行わなくても強制執行できる執行証書になります。
同性婚やカップルに対して徐々に理解が深まる昨今、同性不倫であっても、証拠があれば離婚できるケースはあります。もし自分の配偶者の不倫相手が同性であることがわかり、離婚や慰謝料の請求をしたい場合には、証拠を集めることが何よりも大切です。異性の場合と比べて証拠を集めることが難しいので、自分一人で悩まずに専門家に相談しましょう。