離婚後における年末調整の注意点とは?
給与所得のある人は年末調整の書類を職場に提出する必要がありますが、離婚した場合には内容で注意すべき点があります。東京の弁護士相談にも扶養控除や配偶者控除がどうなるかといった相談が少なくありませんので解説します。
離婚した場合に配偶者控除はどうなるのか
年末調整の書類は、すでに提出済みである昨年の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に異動=変化がないか確認するために配布されます。この際に翌年分の申告書も配布され、同時改修されるのが一般的でしょう。
離婚はもちろん異動に該当しますが、気になるのは扶養控除です。扶養控除は養う家族がいる分税負担を軽くできる仕組みですが、対象となるのは該当する年の12月31日時点の状況です。配偶者控除の対象となる配偶者の要件はいくつかありますが、配偶者の収入に上限があるほか、生計を一にしているという要件があります。
迷うのはちょうど12月末に離婚が決定しているような場合ですが、法が判断するのはあくまでも該当する年の12月31日の現況です。つまり、例えその年のほとんどすべてを扶養していたとしても、12月31日に離婚が成立していれば配偶者控除を受けることはできません。
配偶者の効力は結婚届を受理された時点で発揮され、離婚届を受理された時点で消滅しますので、届が翌日1月1日に提出されるのであれば控除は受けられます。それまで扶養していた側が税金面で少しでも有利にするためには、場合によっては1月に入ってから役所に届出ることで税金面で有利にする手段はなくはありません。
ただし、これを逆手に取り、例えば12月30日に結婚して1月以降に籍を抜くなどの操作によって配偶者特別控除を受けるような悪質な行為は、きちんと法律で禁止されています。税務署が踏み込んで延滞税や徴税罰則を課せられるようなことにならないよう、正しく申告をするのが当然の義務です。
一方で、配偶者が死亡したという場合はこの限りではありません。死亡時に配偶者控除の要件を満たしている場合は、該当する年の配偶者控除は受けることが可能であり、この場合は例え年の途中であっても月割計算などはおこないません。またあまりないケースですが、年の途中で配偶者と死別し、その年のうちに再婚した場合には、どちらか一方の配偶者のみが控除対象となります。
子どもがいる場合の扶養控除はどうなるのか
配偶者に関しては前述のとおりですが、子どもがいる場合は扶養控除に関しても気になるところです。別居しても養育費を払っている人はとても多いですが、扶養親族の対象者は給与所得者と生計を一にするという条件が掲げられています。果たして一緒に暮らしていないのに生計を一にすると捉えていいのか、ここが悩むポイントでしょう。
例えば婚姻関係にある場合、子どもに限らず配偶者とは別居していて、生活費を送金しているケースは生計を一にすると認められます。一人暮らししている学生の子どもに仕送りをしたり、出稼ぎや単身赴任先から家族に送金するといったケースをイメージすればよいでしょう。この場合はもちろん子どもは扶養親族として認められ、扶養控除を受けることができます。
ただ、離婚後に子どもに対して扶養義務に基づく送金をしたとしても、それは生計を一にするとは認められません。イレギュラー的に実質扶養が認められるケースもなくはありませんが、子どもが元配偶者と生活している場合はそちらの扶養家族となり、送金している側は控除が適用されませんので注意が必要です。
寡婦・寡夫制度という別の控除がある
離婚や死別で子どもがいる場合、その後婚姻をしていない女性なら「寡婦」、男性なら「寡夫」となり、それぞれに別の控除があります。税法に定める要件がありますが、扶養親族の有無や所得金額によって適用要件や控除される金額が変わりますので注意しましょう。こちらも該当する年の12月31日時点の現況で判断されますので、ここもポイントです。
この制度はもともと、夫との突然の死別によって生活が困窮する女性を救う制度で、死別の場合は扶養親族または生計を一緒にする子どもがいなくても、所得が500万円以下であれば一般の寡婦と認められます。扶養親族である子どもがいる人は「特別の寡婦」となり、所得が500万円以下であれば35万円の控除が受けられます。扶養親族または子どもと生計を一緒にする場合は、所得の上限がない「一般の寡婦」となり、控除額は27万円です。ただし、離婚が原因の場合は扶養家族や子どもがいないなら要件には該当しません。
男性の場合は別の要件があり、生計っを一緒にする子どもがいる場合は、所得が500万円以下の要件で27万円の控除が受けられます。つまり、寡夫になるのは子どもと生計を一にしている場合のみですので注意しましょう。
離婚した場合、その時期によって年末調整で配偶者控除や扶養控除を受けられなくなる場合あります。申告は該当する年の12月31日時点の現況で判断されますので、例えそれまで一年のほとんどを扶養していたとしても、すでに届を受理されていれば控除は受けられません。
子どもがいる場合、ほかに寡婦や寡夫といった控除の制度もありますので、要件を満たせば別の控除を受けることも可能です。申告は法に則り、正しくおこなうようにしましょう。