離婚後すぐに再婚したいけど?「再婚禁止期間」について解説!
離婚直後に次のパートナーが見つかったり、または婚姻中に別のパートナーとつながっていたり、理由はそれぞれあるかもしれませんが、離婚後すぐに再婚ができないことをご存知でしょうか。詳細を知っている人は意外と少ないかもしれません。再婚禁止期間という考え方について説明します。
再婚禁止期間とは
再婚禁止期間とは、夫との婚姻関係が解消、または、取り消しを行った日を1日目とし、そこから100日間は再婚できないという仕組みです。男性には適応されず、女性のみが対象の日本国内のルールです。また、婚姻関係の解消とは、離婚や死別してしまうことを指し、取り消しとは、さまざまな事情によって、婚姻関係が不成立となり取り消された場合のことを指します。
女性にだけ再婚禁止期間が定められている理由
再婚禁止期間がある理由として、ある考え方が関係しています。まず、男性は妊娠出産ができませんが、女性は妊娠出産ができます。つまり、この問題には妊娠出産が深く関係しているのです。
仮に、離婚をした女性が離婚したその日にほかの男性と再婚し、すぐに妊娠したとしましょう。生まれた子どもの親は誰なのかという点に注目した際、女性は実際に出産を行うという既成事実があるため、母親の存在は明確ですが、こういったケースでは父親を明確にすることは簡単ではありません。
前夫の子どもか、現夫の子どもか、すぐに判別できないのです。
これは、民法772条の嫡出推定制度にのっとった考え方になります。嫡出推定制度は、婚姻中に妊娠した子どもは、法律上、夫の子どもと推定するという考え方で、婚姻の成立日から200日が経過した後に生まれた子どもは現夫の子ども、離婚後300日以内に生まれた子どもは、前夫との間に生まれた子どもとして戸籍に記載されます。
仮の話ですが、離婚した後に、期間をおかずに再婚し妊娠した場合、前夫と現夫、両方の子どもとして、認められてしまう期間が100日間存在してしまいます。前夫と現夫、ともに条件を満たしてしまうため、扶養義務を負う父親を明確にできないのです。こういったケースを防止するために、女性に限って再婚禁止期間は100日間と定められているのです。
再婚禁止期間が例外となるケース
この規定は明確な例外が存在します。子どもの父親の推定が容易であったり、女性が子どもを妊娠出産することが難しかったり、子どもの親は誰なのかという点で混乱する要因がないのであればこの規定は適応されず、再婚が認められる場合があります。代表的な事例を解説します。
離婚した時点で妊娠していない
前夫と離婚した際に、女性側が妊娠していないという証明ができれば、前夫との子どもとは考えられにくく、再婚禁止期間であっても再婚できます。その際は医師による証明書が必要となります。妊娠をしていないという証明書を提出しなければ、婚姻届は受理されないため、注意が必要です。
離婚前に妊娠しており出産をした場合
離婚前に妊娠していた場合は、出産日以降であれば再婚禁止期間でも再婚できます。父親は前夫の子どもと推定されるためです。こちらも医師による証明書がなければ婚姻届が受理されないため、証明書の準備が必要となります。
前夫との再婚
離婚した前夫との再婚であれば、再婚禁止期間は除外されます。何かわけがあって離婚をした二人であるため、このケースはあまり現実的ではなく、極めてまれなケースとなりますが、この場合も、子どもの父親は前夫のみと推定されるため、再婚禁止期間でも再婚できます。
女性が妊娠できない場合
女性が子宮を全摘出しているなど、妊娠ができないことが証明されている場合は父親推定の問題も起きないため、再婚禁止期間でも再婚できます。
再婚禁止期間を守らないとどうなる?
規則を守らない以上は罰則が与えられるものと考えてしまうところですが、結論からいえば、例外を除いて、再婚禁止期間中であれば役所は婚姻届を受理しません。仮に、手違いがあったとして、婚姻届が受理されたとしても、法律上の罰則やペナルティはありません。
しかしながら、先ほど説明したとおり、前夫と現夫がともに父親の条件を満たしている場合は、法律上の父親を決めなければならないため、裁判所が父親を判断することになるのです。また、もし妊娠した際の子どもが前夫の子ではないことが明確であったとしても、再婚禁止期間を守らずに出産した場合、その子どもは前夫の子として戸籍上は記載されます。
前夫との子どもとされてしまうことをどうしても避けたいという観点から、出生届を提出せず、子どもが無戸籍となるケースもあるのです。このような悲劇は、再婚禁止期間という規定を親が守ってさえいれば、起こることはなかった問題です。余計なトラブルや労力を使うこととなるため、ルールは守るほうが賢明といえます。
再婚禁止期間についての最新状況
2022年10月14日、日本政府は、再婚禁止期間の廃止を盛り込んだ改正案を閣議決定しました。そして、12月10日の参議院本会議にて、嫡出推定を見直すことが正式決定となりました。今回の法改正によって再婚禁止期間というルールはなくなり、離婚後、300日以内に生まれた子であっても、再婚後であれば現夫の子と推定する形となるとのことです。2024年夏までに施行される見通しで、今後の動向に注目しましょう。
まとめ
再婚禁止期間とは、女性のみ、婚姻関係の解消または取り消しを行った日から、100日間という期間に限って再婚ができないという規定で、子どもの父親が誰なのか、明確にするための規定です。民法772条の嫡出推定制度は、婚姻中に妊娠した子どもは法律上、夫の子どもと推定しますが、離婚直後に再婚し出産をした場合、100日間は前夫と現夫の2人の夫が父親としての条件を満たしてしまいます。民法上、父親推定が難しいという問題を避けるために、再婚禁止期間を設けて運用していましたが、2022年10月に再婚禁止期間廃止の改正案が閣議決定され、2022年12月の参議院本会議で正式決定となりました。2024年夏までに施工される見通しで、子どもの父親認定と、無戸籍者問題が解決される見通しです。今後の動向に注目しましょう。