養育費を払ってくれない…。こんなときどうする?
昨今、「養育費を払ってくれない」「連絡を無視される」など、養育費の不払いについて悩んでいる人も少なくありません。この記事では、公正証書がなくても裁判所へ依頼し、相手の資産や給料を差し押さえる方法や、直接会わなくても督促できる「内容証明」について解説します。ひとりで悩まず、ぜひ参考にしてみてください。
離婚後によくありがちな養育費問題
子どもを育てるためには、食事や衣服、学費などさまざまな費用が必要です。「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」(民法887条1項)と法律で定められているように、親権がない場合でも、子どもの養育費を支払う義務があります。
それにもかかわらず、養育費を払わない人が少なくありません。「払いたくない」という身勝手な理由を持つ人もなかにはいますが、理由があって「払えない」という場合もあります。どんなケースがあるのでしょうか。離婚後によくありがちな養育費問題について解説します。
■病気になってしまった
病気で動けない、本人に支払い能力がないと判断された場合、養育費の支払いが免除されるケースがあります。しかし現段階で働けなくても、仕事に復帰し「働ける能力や潜在的稼働能力があると認められた場合」は、養育費を支払う義務が生じます。
■再婚した
再婚し、再婚相手の子どもと養子縁組を結んだ場合、養育費の支払いが免除される可能性があります。しかし、これまでの養育費が未払いである場合や支払いに応じない場合は、強制執行で資産を差し押さえることができます。相手が再婚する前に、養育費の支払いについてしっかり話し合う必要があるでしょう。
養育費の支払いを放棄すると資産差し押さえに!
もし、養育費を支払ってもらえない場合、裁判所に申し立てることで、親権者は相手の資産を差し押さえることができます。差し押さえの対象になるのは、土地や持ち家といった資産や現金など。最も多いケースは給料の差し押さえで、養育費を給料から差し引いて親権者へ支払いしてもらう方法です。
公正証書を作っている場合はさらに強制力があり、書類自体に差し押さえができるほどの効力があります。給料の差し押さえ額については、税金などを控除した2分の1が対象になります。1か月に差し押さえできる金額を例として紹介します。それぞれの金額に違いはあるものの、たとえば、相手の未払いの養育費が100万円ある場合、100万円に達するまで支払いを受けることができます。
■相手の給料が66万円を超えない場合(税金等控除する)
相手の給料が26万円の場合、そのうち13万円が差し押さえられ、相手の勤務先より親権者へ支払われます。
■相手の給料が66万円を超える場合(税金等控除する)
相手の給料が88万円の場合、そのうち「33万円を差し引いた」55万円が相手の勤務先より親権者へ支払われます。
まずは内容証明で養育費を請求しよう
裁判所に申し立てるときにポイントになるのが「内容証明」です。養育費を滞納している相手に書類を書いて、郵便で督促する方法を「内容証明郵便」といいます。内容証明には、いつ・誰が・誰に・どんな内容だったのか郵便局の局長が内容証明郵便を証明する記載がされています。
最近では、インターネットを通じて24時間発送できる「e内容証明(電子内容証明)」も利用でき、便利になっています。一番の利点は、相手へ送ることで、相手に書面が届いている証明として役立つこと。なにより、相手に接触せず支払いを督促できる効果的な方法といえます。焦らず、まずは内容証明を郵送して養育費を請求しましょう。
■記載しておくべき内容
必ず記載しておくべきことは、「差出人の住所・氏名・年月日・相手の氏名・住所・本文」などです。本文の内容は、離婚当初に約束していた養育費の支払いの義務が相手にあること、現状支払いがされていないこと、それをいつまでにいくら支払ってほしいのかを記載します。ここで気をつけたいことが、相手に故意に不利益を与えることを書くと「恐喝行為」と評価されてしまうおそれもあるので、注意しましょう。
■文字数・行数
内容証明は、字数と行数に制限があります。縦書きの場合は「1行20字以内・1枚26行以内」、横書きの場合は「1行20字以内・1枚26行以内または、1行13字以内・1枚40行内、1行26字以内・1枚20行以内」。枚数には決まりがありません。
■内容証明の費用
内容証明郵便は、一般書留になります。費用例として、1枚の書類を定形郵便(重量25g以内)で差し出す場合は次のようになります。
「84円(基本料金)+435円(書留料金) +440円(内容証明の加算料金)=959円」
内容証明の加算料金について、「2枚700円、3枚960円」など、枚数により金額が違うので注意しましょう。また、速達や配達証明も追加できます。
■それでも支払われない場合
内容証明で注意したいことが、文書に強制力がないことです。内容証明を送っても養育費が支払われない場合は、裁判所を通じて「督促書」を送付してもらう方法もあります。相手が異議を申し立てれば、自動的に裁判へ移行になるので、その場合は裁判を見越して申請することをおすすめします。
まとめ
離婚後にありがちな養育費の問題や、裁判所へ申請すれば未払いの養育費を差し押さえられること、内容証明郵便で相手へ直接会わず督促できることを紹介してきました。養育費を払ってもらえない状況でも、さまざまな解決策があります。それでも、「ひとりで解決できるか不安」という人は弁護士への相談がおすすめです。東京には離婚問題に強い弁護士が多数います。あなたに寄り添った的確なアドバイスが期待できるので、ぜひ相談してみてはいかがでしょうか。