ペーパー離婚とは?メリットとデメリットを解説
時代が移り変わるたびに新しい言葉は生まれ、いつの間にか当たり前のように使われるようになります。最近、話題を集めているペーパー離婚もそのひとつでしょう。今回の記事では、ペーパー離婚とは何か、メリット、デメリットについても解説します。興味のある方は一読したうえで、今後の参考にしてみてください。
ペーパー離婚とは?概要を説明
ひと昔前までは、離婚するうえでのハードルはとても高いものでした。もちろん、現在でも一定の障壁はありますが、社会的状況や個人の価値観の変化などがあり、以前と比べると、離婚につきまとう負のイメージは少なくなったといえるでしょう。ペーパー離婚が注目されるのも、その流れと無縁ではありません。
ペーパー離婚とは、離婚届を役所に提出して、法律婚から事実婚へと変更する手続きのことを指します。法律婚とは文字通り、婚姻届の提出により成立するもので、事実婚とは、婚姻届けを出さずに事実上の婚姻関係にある状態のことです。つまり、ペーパー離婚は、性格や価値観の不一致、異性関係などを理由に別れるのではなく、今まで通りの共同生活を維持しながら、法律上のみで離婚するという意味合いがあります。
では、単なる法律上の手続きで済むとはいえ、いったいなぜこんなことをするのでしょうか?目的の大半は、夫婦別姓を実現させることにあります。夫婦別姓は昨今、社会問題にもなっているので、みなさんも聞いたことがあるでしょう。
日本では、法律上、夫婦同氏が原則で、結婚するとたいてい女性のほうが夫の姓に合わせることが当たり前になっています。しかし、いざ結婚してみると、姓の変更にまつわる職場でのトラブルや住民票、パスポート、金融機関といった公的書類の名義変更など、想像以上にストレスの溜まる状況になりがちです。
以上の理由などにより、姓が変わることで降りかかる面倒事を避けるために、便宜上、ペーパー離婚を選ぶ人もいます。
ペーパー離婚のメリット
人によって異なりますが、ペーパー離婚するうえでのメリットは以下のことが考えられます。
夫婦別姓のまま生活できる
いちばんの利点は、夫婦別姓を実現させることです。繰り返しになりますが、日本の現状では、夫婦のうち、どちらか一方の姓を使うように法律で定められています。しかし、子供の頃から馴れ親しんだものなので、自分の姓に愛着が深い人もいるはずです。
結婚当初、他人から夫の姓で呼ばれて違和感を抱いた方も少なくないでしょう。ペーパー離婚すれば、法律上で別姓になるだけで、ふだんの生活、環境は変わりません。今まで通り配偶者とともに暮らせます。とくに女性の場合、旧姓を使ったほうがいろいろと仕事がしやすいかもしれません。
民法上の義務や責任に縛られずに済む
ペーパー離婚は、法律婚から事実婚へ変更することです。事実婚は、法律婚とは違い、民法上で定められた義務や責任からの解放、つまり、法的拘束によって制限されなくなることに意味があります。夫婦別姓のうえで、なおかつ、これまで通りの暮らしを続けたいみなさんにとっては、非常に重宝する手段といえるでしょう。
公的書類の名義変更などの面倒な手間が省ける
金融機関などの書類で引き続き旧姓を使えるのは、利便性という意味では大きな魅力です。公的な書類の名義変更は、多岐に渡る場合があり、多くの時間を奪われることにもなりかねません。その手間を省けるのも、ペーパー離婚の強みといえます。
ペーパー離婚のデメリット
すべていいこと尽くめなら問題ありませんが、もちろん、そううまく事は運びません。ペーパー離婚にもデメリットがあります。
民法上で定められた法定相続人の権利を失う
ペーパー離婚で最大のデメリットといえば、両者ともに法定相続人になれないことが挙げられます。なぜかというと、法律婚から事実婚へ変わることで、民法上で守られていた権利が消失するからです。どれほど長くいっしょに暮らしても、お互いの法定相続人にはなれません。そのことを改めて肝に銘じておきましょう。
戸籍に離婚の履歴が残ってしまう
戸籍上に離婚の2文字が刻まれるのも、ある人にとっては抵抗を強く感じることかもしれません。たとえば、法律婚と事実婚を繰り返すペーパー離再婚をした場合、その分、履歴として婚姻、離婚が残ってしまうことにもなります。
まわりの人たちから理解されないことでストレスが溜まる
周囲から理解されにくいこともストレスになることでしょう。ペーパー離婚という言葉は広く浸透していても、まだ常識といえるまで定着しているわけではありません。場合によっては、強い不快感を示す人もいるはずです。また、子供がいるケースでは、まわりとの認識のズレを埋めるために、説明を含めた丁寧なフォローが必要になります。
まとめ
厚生省が発表した2021年の人口動態統計月報年計(概数)によると、日本の離婚率は、1,000人あたりで1.50人です。ちなみに、総務省統計局による2022年のデータでは、世界でいちばん離婚率が高いのはベラルーシで、1,000人あたりで3.7人が離婚している計算になります。数字が示す通り、日本でも離婚は珍しいものではなくなったといえるでしょう。今回紹介したペーパー離婚は、通常の離婚とは違って、夫婦別姓を目的とする便宜上の手段という性格が強いものです。説明してきた内容を踏み台にして、これからの人生に活かしてみてください。