単身赴任中に離婚するとなった場合はどうするの?
仕事の都合で婚姻中の夫婦が別々に暮らすこととなる単身赴任は、離婚のリスクが高まりやすいともいわれています。ここでは単身赴任中に離婚する場合、単身赴任そのものを離婚の理由とできるのか、海外に単身赴任しているケース、事前に知っておくべき注意点など、単身赴任中の離婚についてわかりやすくまとめてご紹介しましょう。
離婚理由として「単身赴任」はOK?
そもそも離婚自体、単身赴任が理由であってもなくても双方が納得さえすれば可能です。これを「協議離婚」といいます。ただし、離婚に相手が同意せず裁判で離婚について争うことになった場合、判断は裁判所にゆだねられるのです。
法定離婚事由には「配偶者の不貞」「悪意の遺棄」「配偶者の生死が三年以上明らかでない」「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があります。
単身赴任が浮気をしやすい環境であるのは事実です。遠方の場合は目が届きにくく、浮気をしても気づかれないと思ってしまいます。配偶者が単身赴任中に不倫をしたことが理由の場合、離婚事由は「配偶者の不貞」です。
また、毎月の生活費をきちんと送ってくれない場合などは「悪意の遺棄」にあたります。単身赴任により小さい子どもの育児や高齢の親の介護といった負担が一方にだけかかっている場合は、家事や育児に非協力的ということで「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められることもあるのです。
遠距離恋愛がうまくいきにくいのと同じで、距離が離れているとコミュニケーションの頻度がどうしても少なくなりがち。喧嘩をしたあとに仲直りの機会がなくどんどん時間が過ぎてしまうこともあります。そうしたことが不貞や悪意の遺棄のきっかけとなることもあるでしょう。単身赴任中も円満な夫婦関係を続けるには、お互いに意識してコミュニケーション量を確保することが必要です。
配偶者が海外にいる場合は?
配偶者の単身赴任先が海外の場合、離婚は可能なのでしょうか。双方が話し合いによって合意している協議離婚であれば、離婚届を郵送して必要事項を記載の上、送り返してもらい本籍地もしくは住民票のある役場に提出することで離婚を成立させることができます。
ただし、時差のある場合などなかなか話し合いが進まないこともあるでしょう。離婚の際は、財産分与のほか子供がいる場合は親権や面会権の取り決め、養育費の支払いなど話し合わなければならないことが多くあります。
結局、一時帰国のタイミングまで待つことになるなど、協議離婚であっても離婚がまとまるまでに普通よりも時間がかかる可能性があるのです。また、相手が離婚に対して納得をしておらず、離婚調停となった場合は海外に住んでいる配偶者が調停に出席することができないので調停離婚は難しくなります。
単身赴任中の配偶者と離婚する際の注意点
単身赴任中の配偶者と離婚する際、まずポイントとして押さえておくべきなのは「単身赴任なのか別居なのか」という区別についてです。前述のとおり単身赴任自体は離婚事由にはなりませんが、長期間の別居は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたります。
また、単身赴任の場合は経済的な協力関係が継続しており、別居の場合はその関係が終了すると考えられるという点が財産分与に大きく関係しているのです。単身赴任の場合、財産分与は離婚が成立した時点での資産から算出されますが、別居の場合は経済的な協力関係が終了した時点=別居時となります。
単身赴任の期間が10年以上におよんだ場合、単身赴任前と後では資産の金額も大きく変わるのです。財産分与の金額が別居と単身赴任とで変わってくるので、もし離婚を前提とした別居と考えて単身赴任をするのであればそのことを証拠として残しておいたほうがいいでしょう。
この点は裁判でも争点となることが多いので注意してください。財産分与においては、とくに単身赴任の期間が長いと配偶者の知らない口座をもつなど財産の全容を把握しづらくなります。ネットバンキングなどを利用してお金の流れを把握しておくといった対策をとっておくといいでしょう。単身赴任先のポストや郵便物などのチェックもしておくと自分の知らない金融機関との取引がないか確認できます。
また、単身赴任中の相手と調停で離婚の話し合いをする場合は、なかなか話し合いが進まず、合意書作成にも時間がかかるなど、普通よりも長期化することは覚悟しておいたほうがいいでしょう。同居の場合でも調停で離婚がまとまるまでに半年程度はかかります。単身赴任中に離婚を成立させるには1年以上の期間を要する可能性があるということも頭に入れておきましょう。
まとめ
単身赴任自体は離婚の原因とはなりませんが、単身赴任中は浮気をしやすく離婚につながるリスクは大きくなります。単身赴任が海外を含めた遠方の場合は実際に離婚の手続きをするのも面倒な点もあるのです。協議離婚が成立すれば問題ありませんが、調停や裁判となるとより複雑になり離婚までの協議期間も長期化します。調停となった場合もできるだけスムーズに離婚できるよう、こちらで紹介した内容も参考に準備をしておくといいでしょう。